久しぶりに自転車で転ぶ

日々
Tampere 2003
Tampere 2003

先日、雨の日に自転車(ママチャリ)で転んだ。近所の堤防を走っていたときのこと。ゆるくカーブしたアスファルトに水たまりがあって、それを避けようとしたが前輪が泥にさらわれた。思い上がって曲がりきれるはずだと思い、スピードを落とさずにカーブに突っ込んだのがよくなかった。

泥水のアスファルト上に体の左側からザバアとヘッドスライディングするように落ちた。一瞬意識が飛んで、すぐに立ち上がることができず、泥水のアスファルトの表層をしばらくの間ながめながら、骨折してなければよいが、とぼんやりと思った。

膝の痛みはあったが、大きくは腫れていなかったので、骨折やヒビは入っていないだろうと思った。腰と背中、首筋を中心にして全身筋肉痛のようにダルかったが、日薬りと諦め、化膿しそうだった膝の擦り傷を、顔のイボのことでもお世話になっている皮膚科で治療をしてもらった。

「どうしたんですか?だいぶ派手に擦りむきましたね」
僕の膝の擦り傷をザルコニン液で消毒して、ゲンタシン軟膏をぬりながら、美人の看護師さんは少し呆れたような顔をしてそう言った。僕もこの年(40代後半)で自転車でこんなに派手に転ぶとは思ってもいなかった。

前回自転車で転んで怪我をしたのは、1985年8月12日の夕方だった。僕は当時高校生で外出先からの帰り道、夜7時頃、暗くなってきたので前輪のダイナモランプのスイッチを自転車(ママチャリ)に乗りながら足先で押そうとして、前輪につま先を突っ込んでしまい、その場で前転宙返りをして頭からアスファルトの路面に落ちた。その時以来のことだ。

頭から血をダラダラと流して帰宅した僕を見たときの母の顔が今でも忘れられない。近くの病院で頭頂部を何針か縫ってもらい、夜中の暗い自宅の部屋で横になりながら、聞くともなく聞いていたFMラジオから、僕が自転車から落ちたちょうど同じ時刻に、日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落したというニュースを聞いたのを思い出した。

もちろん、僕が自転車から落ちて転ぶことと、飛行機墜落のような大惨事には因果関係はないのだが、今回も大事故や大事件といった悪いニュース(ニュースというものはたいてい悪いものかもしれない)があると嫌だし、体じゅう痛くてしょうがなかったので、ラジオも聞かず、ネットのニュースも見ないで残りの一日を過ごした。

翌日のニュースで知ったのだが、その日、EUに残留を主張していたイギリスの国会議員が暗殺された。日航ジャンボ機墜落事故とイギリスの議員の暗殺事件の間には、とても悲惨な出来事であるということ以外なんの関係もないのだけれど、「自転車で転ぶ」という個人的体験を通して記憶の断片がつながってしまったようだ。

今回久しぶりに自転車で転んで思ったのは、転ぶにしても体力が必要だということかな。まだまだ転んでも大丈夫そうだなと妙な自信がもてた。