フィンランドでカツ丼

フィンランド
Tampere 2012
Tampere 2012

 旅の食事の楽しみは、断然、まずいものを食べることである。一口食べてほおがゆがみ、二口で涙が出てきて、三口で逃け出したくなるような、そういうまずいものと思いがけず出会うことの豊かさを味わわなければならない。旅をしたからこそ、その味に出会えたのである。

清水義範「全国まずいものマップ」 (清水義範『私は作中の人物である』所収)講談社

フィンランドの日本食レストランで、カツ丼を食べたことがある。とても不味かった。パサパサのご飯の上に、カリカリに揚げたトンカツと生野菜のサラダがのっていて、マヨネーズ風味のタレがかかっていた。

卵はない。味醂や醤油の割り下もない。いわばトンカツ定食を、丼内で垂直に積み上げただけの、まるで心柱のない五重塔のようなものであって、日本風ではあるけれど、和食ではないなと思った。

レストランのシェフはフィンランド人ではなくスペインの人だった。スペイン人のシェフがフィンランドでカツ丼を作り、日本人が食べるという、やや込み入った状況だったことは書き添えておきたい。

随分以前のことなので、現在そのレストランがどうなっているのか知らない。和食という意味での日本食ではなく、単に「日本風」のレストランだとしたら、風向きによっては、どこかへ吹き飛んでしまうだろう。ただ、あまり難しいことは考えず、とりあえずやってみるという軽快さは、ある意味日本的なのかもしれないが。

丼ものは、盆栽、生花、俳句のように、少ない具材を丼内で調和せしめ、そこに出現する丼宇宙をいただくという、とても日本的なメニューだ。日本では当たり前に食べているカツ丼だが、たまさかフィンランドで、その奥深さに気づくことができたことは不幸中の幸いだった。

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