第一印象

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TELAKKA Tampere Finland 2006
TELAKKA Tampere Finland 2006

ある人や場所に初めて出会って、その印象や状況をよく覚えていることがある。第一印象だけで何かを決めつけてはいけない、ということを歳を重ねて学んできたはずだが、ささいなことやどうでもいいことなのに、なぜかそこだけハイライトされて覚えているということも体験的に知っている。

十数年前の8月に、名古屋から飛行機、電車、バスを乗り継ぎ、数日をかけて目的地であるフィンランドのVoionmaan opistoに僕とうちの奥さんがたどり着いたとき、レセプションには誰もいなくて閑散とした雰囲気だった。新学年が始まる4、5日前だったので、僕たちが一番乗りしてしまったのかもしれない、と思っていたら、警察犬のような大きな犬が一匹、どこからともなくハアハアとかけてきて、僕たちを出迎えてくれた。とても気持ちのよい天気だったことを覚えている。

見かけによらず愛想の良いその犬とあたりをウロウロとしていたら、 高校を卒業したばかりとおぼしき10代後半の、すごく可愛いフィンランド人の女の子がスーツケースを引いて現れた。僕たちは、そこで初めて会うフィンランド人に緊張しながら、「ハロー!」と声をかけ、「レセプションの人はどこですか?」「さあ、そのうち誰か来るよ」みたいな会話を、はにかみながら交わした記憶がある。彼女はJohanna(ヨハンナ)という名前で、そこで新しくはじまる学校生活をとても楽しみにしていて、キラキラと輝いていた。

ただその後、僕はJohannaと口をきく機会はまったくなかった。たしか彼女は舞台芸術か映画のコースだったはずだし、僕たちは写真のコースにいたから、接する機会が少なかったというのもある。学生は100人ぐらいだったので、顔はよく見て知っているんだけれど、話したことがないっていう人は他にもたくさんいたし、まあよくあることだと思う。

10ヶ月が過ぎて学年も終了し、タンペレを発つ直前、ふと思い立ってVRの駅の近くにあるTelakkaに寄ってみると、そこに偶然、Johannaがいた。彼女はオープンテラスで太陽の光をいっぱい浴び、リラックスした雰囲気で友達ととジョッキを傾けていた。「Moi!」と彼女らに挨拶して、僕と奥さんは店内に入ってお茶を飲み、店を出る時に、「Näkemiin!」と短くさよならの挨拶を交わした。

僕が初めて学校で会って挨拶をしたフィンランド人がJohannaであり、タンペレを発つ時に最後に挨拶をしたのも彼女であるということが、不思議と強く記憶に残っている。もっとも、彼女自身はこんなささいなことは覚えてもいないだろうけれど。

ところで、Voionmaan opistoで出迎えてくれた犬は、僕たちと同じ写真のコースの学生が飼っていた、Rasmusという名前だった。Rasmusとの思い出もたくさんあるけれど、第一印象に関して言えば、Johannaのほうが僕の記憶の中でハイライトされている。なぜだろう? やっぱり可愛い女の子のことは、よく覚えているものなんだろうか。なんだ、そうか、やっぱり第一印象は大切なんだな。

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