マルック・ペルトラ(Markku Peltola)の思い出

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Markku Peltola at Telakka Tampere Finland 2013
Markku Peltola at Telakka Tampere Finland 2013
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セントレア(中部国際空港)が開港10周年

セントレア(中部国際空港)が今年(2015年)で開港10周年になるそうだ。僕がフィンランドに留学した最初の年(2003年)は、セントレアはまだなくて、国際航空としては、名古屋あたりでは小牧空港があるだけだった。そこから出発するヨーロッパ便は主にルフトハンザ(ルフトハンザドイツ航空)で、それ以外では、成田空港か関空からSAS(スカンジナビア航空)またはルフトハンザというのが主流だった。フィンエアー(フィンランド航空)も飛んでいたと思うが、少なかったと思う。僕の場合は、成田空港から出発するSASを一番多く利用していた。SASはフィンランド以外のスカンジナビア三国、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの合同の飛行機会社なので、ヘルシンキを通り越して、コペンハーゲンなどでトランジットをしてヘルシンキへ、となる。ただし、場合によっては、コペンハーゲンでストックホルム行きの飛行機に乗り換え、さらにストックホルムからヘルシンキ行きへ乗り換えなければならないこともあった。コペンハーゲンからストックホルム間、ストックホルムからヘルシンキ間の飛行機は、小型のプロペラ機で、体の大きな北欧人たちに混じって、ギュウギュウ詰めになりながら数時間のフライトに耐えねばならなかった。まあ、それはそれで今となっては貴重な体験だったのだが。

アキ・カウリスマキ監督『過去のない男』

どちらにしても、日本からヨーロッパまでは9時間ぐらいの長時間フライトになる。初めてのフィンランド行きのときには、SASの機内で放映していた、アキ・カウリスマキ監督の『過去のない男』を座席の前の小さなモニターで何度も観て過ごした。寝ている時以外はずっと観ていた。僕は、アキ・カウリスマキ監督の作品は『マッチ工場の少女』を大学生ぐらいの時に観たことがあった。とても印象に残る映画で、フィンランドといえば、アキ・カウリスマキ、アキ・カウリスマキといえば『マッチ工場の少女』、つまり、フィンランド、イコール『マッチ工場の少女』という図式が僕の中で出来上がっていた。と同時に唯一のフィンランドに対する印象だった。逆に言うと、これ以外のことはフィンランドについてほとんど何も知らなかったと言ってもいい。ムーミンやサンタクロースのことも僕の頭のなかでは、フィンランドとは全くつながっていなかった。とにかく、フィンランドに初めて行く飛行機の中で、アキ・カウリスマキの映画に再開できたことが嬉しくて、夢中になって『過去のない男』を観た。その映画で、主人公を演じていたのが、マルック・ペルトラ(Markku Peltola)だった。マルック・ペルトラはアキ・カウリスマキ監督の『浮き雲』にもコックの役で出演していた。良い具合によれた感じのアキ・カウリスマキ監督の映画にピッタリの俳優だったが、残念なことに、2007年に病気で亡くなってしまった。

マルック・ペルトラ(Markku Peltola)

マルック・ペルトラに会ったことがある。2004年にフィンランドのタンペレ近くの国民学校にいた頃のこと。学食でいつものように、昼食のフィンランド風パスタを食べていたら、一つ向こうのテーブルの真正面で、学生たちと並んでフィンランド人の中年男性が、同じようにパスタを食べていた。僕がじっと見つめていると、向こうも、鋭い眼差しでこちらを見つめ返してくる。どこかで見たことのある人だけれど、どうしても思い出せない。この学校では会ったことのない人だし。隣にいた一緒に食事をしていたフィンランド人の友人に尋ねた、「ねえ、僕はあの男の人のことを見たことがあるのだけれど、全然思い出せないんだ、君はあの人誰かわかる?」と。友人は「マルック・ペルトラだよ」と平然と答えてくれた。「この学校の演劇のコースに教えに来ているんだよ。彼は時々ここにくるんだよ」と。友人の言うとおり、彼はそのあと2,3週間、よく学校で見かけたので、そのうちサインを貰おうと思ったけれど、恥ずかしくてためらってしまい、結局サインは頼まなかった。

テラッカ(Telakka)

それ以後もタンペレの街にある「テラッカ(Telakka)」という、劇場兼バー兼レストランで物静かにビールか何かを飲んでいるのを、何度か見かけていた。チャンスがあったら話をしたいなと思っているうちに時が過ぎてしまった。2006年にはマルック・ペルトラは『かもめ食堂』に出演し、多くの日本の人にも知られることになったが、亡くなってしまって本当に残念で悲しい。「あのとき、思い切ってサインを貰っておけばよかったのに」と、いまだに、うちの奥さんから責められる。僕も少しは後悔しているんだけれど。

写真は、「テラッカ」内の1階のレストランの壁にかけてある、マルック・ペルトラの肖像画だ。劇場のオーナーに許可を得て撮影した。ちなみに「テラッカ」とは、フィンランド語で、「(船のメンテナンスなどを行う設備)ドック」という意味だ。マルック・ペルトラは、今でも彼のお気に入りの場所で静かにみんなを見守っている。

タンペレ駅のすぐ東側。

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