マルック・ペルトラ(Markku Peltola)の思い出

フィンランド
マルック・ペルトラ(Markku Peltola)の肖像画
マルック・ペルトラ(Markku Peltola)の肖像画

セントレア(中部国際空港)が開港10周年

セントレア(中部国際空港)が今年(2015年)で開港10周年になるそうだ。フィンランドに留学した最初の年(2003年)は、セントレアはまだなくて、国際航空としては、名古屋あたりでは小牧空港があるだけだった。そこから出発するヨーロッパ便は主にルフトハンザ(ルフトハンザドイツ航空)で、それ以外では、成田空港か関空からSAS(スカンジナビア航空)またはルフトハンザというのが主流だった。フィンエアー(フィンランド航空)も飛んでいたと思うが、少なかったと思う。

僕の場合は、成田空港から出発するSASを一番多く利用していた。SASはフィンランド以外のスカンジナビア三国、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの合同の飛行機会社なので、ヘルシンキを通り越して、コペンハーゲンなどでトランジットをしてヘルシンキへ、となる。ただし、場合によっては、コペンハーゲンでストックホルム行きの飛行機に乗り換え、さらにストックホルムからヘルシンキ行きへ乗り換えなければならないこともあった。コペンハーゲンからストックホルム間、ストックホルムからヘルシンキ間の飛行機は、小型のプロペラ機で、体の大きな北欧人たちに混じって、ギュウギュウ詰めになりながら数時間のフライトに耐えねばならなかった。まあ、それはそれで今となっては貴重な体験だったけれど。

アキ・カウリスマキ監督『過去のない男』

どちらにしても、日本からヨーロッパまでは短くても9時間ぐらいの長時間フライトになる。初めての渡芬のときには、SASの機内でアキ・カウリスマキ監督の『過去のない男』を、座席の前の小さなモニターで繰り返し何度も観て過ごした。瞼を開けているときはほとんどずっと観ていた。

アキ・カウリスマキ監督の作品は『マッチ工場の少女』を大学生ぐらいの時に観たことがあった。とても印象に残る映画で、フィンランドといえば、アキ・カウリスマキ、アキ・カウリスマキといえば『マッチ工場の少女』、つまり、フィンランド、イコール『マッチ工場の少女』という図式が僕の中で出来上がっていた。と同時に唯一のフィンランドに対する印象だった。それ以外はフィンランドについてほとんど何も知らなかったと言ってもいい。ムーミンやサンタクロースのことも、頭のなかではフィンランドとは全くつながっていなかった。

とにかく、フィンランドに初めて行く飛行機の中で、アキ・カウリスマキの映画に再開できたことが嬉しくて、夢中になって『過去のない男』を観た。その映画で、主人公を演じていたのが、マルック・ペルトラ(Markku Peltola)だった。マルック・ペルトラはアキ・カウリスマキ監督の『浮き雲』にもコックの役で出演していた。良い具合によれた感じのアキ・カウリスマキ監督の映画にピッタリの俳優だったが、残念なことに、2007年に病気で亡くなってしまった。

マルック・ペルトラ(Markku Peltola)

そのマルック・ペルトラをすぐ目の前で見かけたことがある。2004年にフィンランドのタンペレ近くの国民学校にいた頃のこと。学食でいつものように、昼食のフィンランド風パスタを食べていたら、すぐ向こうのテーブルの真正面で、学生たちと並んでフィンランド人の中年男性が、同じようにパスタを食べていた。

じっと見つめていると、向こうも、鋭い眼差しでこちらを見つめ返してくる。どこかで見たことのある人だけれど、どうしても思い出せない。この学校では会ったことのない人だし。隣にいた一緒に食事をしていたフィンランド人の友人に尋ねた、「ねえ、あの男の人のことを見たことがあるのだけれど、全然思い出せないんだ、あの人誰かわかる?」と。友人は「マルック・ペルトラだよ」と平然と答えてくれた。「この学校の演劇のコースに教えに来ているんだよ。彼は時々ここにくるんだよ」と。友人の言うとおり、そのあと2,3週間、よく学校内で見かけた。そのうちサインを貰おうと思ったけれど、恥ずかしくてためらってしまい、結局サインは頼まなかった。

テラッカ(Telakka)

それ以後もタンペレの街にある「テラッカ(Telakka)」という、劇場兼バー兼レストランで物静かにビールか何かを飲んでいるのを、何度か見かけていた。チャンスがあったら話をしたいなと思っているうちに時が過ぎてしまった。2006年にはマルック・ペルトラは『かもめ食堂』に出演し、多くの日本の人にも知られることになったが、亡くなってしまって本当に残念で悲しい。「あのとき、思い切ってサインを貰っておけばよかったのに」と、いまだに、うちの奥さんから責められる。僕も少しは後悔しているんだけれど。

写真は、「テラッカ」内の1階のレストランの壁にかけてある、マルック・ペルトラの肖像画だ。劇場のオーナーに許可を得て撮影した。ちなみに「テラッカ」とは、フィンランド語で、「(船のメンテナンスなどを行う設備)ドック」という意味だ。マルック・ペルトラは、今でも彼のお気に入りの場所で静かにみんなを見守っている。

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