コスケンコルヴァと土筆

フィンランド

近所の矢田川の河川敷を散歩していると、ビニール袋を手に土手に張り付いて土筆を採っている人たちの姿を見かけるようになった。そんな光景に触発されて、僕たち夫婦もさっそく土筆を採ってきた。「土筆を採るには、まず土筆眼にならなければならない」というのが、うちの奥さんの決まり文句だ。張り切って言うだけのことはあって、彼女の方が僕よりもたくさん土筆を採ってくる。こういうことには本当に熱心だなあと感心する。

フィンランド留学2年目には、南フィンランドのKarjaaに住んでいたことがあるが、四月の終わり頃に、近所の原っぱで土筆を発見したときはおどろいた。フィンランドにも土筆があるんだ。それ以来「土筆眼」になって辺りを見直してみた結果、VR(フィンランド鉄道)の線路脇の土手に群生していたのを発見した。

でも日本人が土手に張り付いて、何やらむしっている姿をVRの乗客の人たちに見られるのが恥ずかしくて、そこで土筆を採るのは断念した。うちの奥さんは、よっぽど採りに行きたかったみたいだけれど。かわりにその辺の原っぱで、それでも結構な量の収穫を得ることができた。

袴をとって、下ごしらえした土筆を卵とじにして共同のキッチンで食していると、同じ寮に住む、ロシア人の友人(30代・女性・英語教師)がちらっと見て、「Yuck!(ヤック、不味そう!)」と言った。「そんなこと無いよ、美味しいよ、食べてみる?」とすすめても、「こんなものを食べるのは日本人だけだ、変わっているなお前ら」という姿勢。ロシア人なら面白がって食べると思ったのに、という僕の先入観は軽く打ち砕かれた。

次にやって来たのが、僕たちの隣の部屋に住んでいた中国人(30代・女性・教育コーディネーター)。中国人は食に対しては好奇心が旺盛のはずだ、という期待を裏切って、「何これ?虫?、こんなもの食べるの?日本人ってかわいそう」というコメント。「中国なら土筆の漢方薬があるでしょ。利尿作用があって美容にもいいよ」と勧めると、「そんなこと聞いたことないよ。それにわたしはタブレット飲んでるから」と一蹴されてしまった。

そして、フィンランド人(50代・女性・写真博物館勤務の学芸員)の反応。彼女のお宅におじゃました際に、庭に土筆がたくさん生えていたのを見て、食には保守的なフィンランド人にはどうかなと思ったが、勧めてみると案の定、
「これを食べるの?ふーん。どうして?」ときた。
「ミネラルがたっぷりですよ」というと、
「ベリー類を食べるから、必要ないよ」
でも「ファイバーがたくさん入っていてお腹に良いし・・」
「ポテトで充分」
じゃあ「ビタミンが豊富で・・・」
「リンゴを食べてるから」
とフィンランド人らしく合理的に全否定されてしまった。
まあ、自国の食文化を押し付けるようなことは、たかが土筆とは言え、したくないからいのでいいのだが。

さて、今朝、近所の日本の土手で取ってきた袋いっぱいの土筆には大満足だけど、袴(はかま)を採るのは、なかなか手間のかかる仕事だ。肝心の調理法は、普通に卵とじか甘辛く煮た佃煮。それをツマミにウイスキーやドライマティーニというのが、最近定着しつつある我が家のスタイル。土筆採りのモチベーションは実はこのへんにあったりする。フィンランドの人たちにも、こんなふうに酒のつまみとして勧めればよかったのかもしれない。コスケンコルヴァ(Koskenkorva)と土筆の佃煮って、なかなか乙な組み合わせかもしれない。今度試してみようと思う。

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