モリッシーも読んだかもしれない、リング・ラードナー「この話もう聞かせたかね」加島祥造 訳

短篇小説
Ring Lardner, "Stop Me, If You've Heard This One"
リング・ラードナー「この話もう聞かせたかね」加島祥造 訳

語り部、というより「騙り部」体質の男、ヘンリー・ワイルド・オズボーン氏についての話。

1927年のある日、オズボーン氏に出会ったリューク・ガーナーは、その前の年にニューヨークからシカゴへ向かう列車で実際に見聞きした(といってもラードナーの小説内でということだが)、ちょっと不可解な出来事をオズボーン氏に話す。

その二年後、オズボーン氏に再会したリュークは自分の体験談を、あたかも氏自身の体験であるかのように(『二十世紀』号は『ブロードウェー』号に、J・S・フレッチャーの探偵小説は、モーパッサンに、色の浅黒いスペイン系の美男子はスカンジナビア系に置き換えられて)、面白おかしく語るオズボーン氏の話芸に舌を巻くことになる。

それから別にひとり若い男がいたが、容貌といい健康さといい、若さの見本みたいな青年でね、まずスカンジナビア系でしょう、金髪でまさにヴァイキングの子孫にふさわしい逞しき若者だったねえ。

リング・ラードナー「この話もう聞かせたかね」加島祥造 訳(『アリバイ・アイク ラードナー傑作選』所収)新潮文庫
Ring Lardner, “Stop Me, If You’ve Heard This One”

人を楽しませるために舌先三寸をフル稼働させ、どんな些細な出来事もエンタメに変換してしてしまうオズボーン氏は、作者のラードナー自身のことなのではないか。天性の語り部、リング・ラードナーの法螺話。眉に唾をつけずに繰り返し聞きたくなる。

じつぷり
じつぷり

ザ・スミスに、Stop Me If You Think You’ve Heard This One Before という、ほとんど同じタイトルの曲がある。ひょっとしたらモリッシーもこの短篇小説を読んで、ラードナーの法螺話に思わず膝を打ったのかもしれない。

すぐ読める度:4.0
再読したい度:5.0
傑作・名作度:4.0