口うるさい女性に対する無口な反逆、サキ「スレドニ・ヴァシュタール」和爾桃子 訳

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Black cat in Ylinen Finland 2003

「あの錠つきの箱に何を飼ってるの? おおかたモルモットだろう。きれいさっぱり処分してしまうからね」

サキ「スレドニ・ヴァシュタール」和爾桃子 訳(『クローヴィス物語』所収)白水Uブックス

病弱で奔馬のような想像力の持ち主である十歳の孤独なコンラディンが、活気のない庭の奥の片隅にある使われなくなった大きな物置で、従姉で保護者の口うるさい「あの女」ミセス・デ・ロップに「絶対内緒」で飼っていたもの、それはフーダン種の牝鶏と大イタチのスレドニ・ヴァシュタールだった。コンラディンはスレドニ・ヴァシュタールを神として崇め、盗んだナツメグの粉末を使って秘儀を捧げるなどして日々を送っていたが、「あの女」に感づかれてしまい、まずフーダン種の牝鶏が処分され、とうとうスレドニ・ヴァシュタールの木箱に「あの女」の捜査のメスが入ることになるのだが。

「スレドニ・ヴァシュタール、なにとぞ一願成就なしたまえ」
内容は口にしない。スレドニ・ヴァシュタールは神なのだから、口にせずともわかるはずだ。

同上

コンラディンの願いとは? その願いは成就したのだろうか? 「あの女」ミセス・デ・ロップの身に何かが起こったようだが。

ぼくも十歳ぐらいのころに、親に「絶対内緒」で、捨てられていた子猫二匹を近所の無人小屋に匿っていたが、あるとき見つかってしまい、知らない間に保健所に持っていかれたことがある。なぜばれてしまったのか真相ははっきりしないが、どうやらぼくの妹が母に告げ口したようだ。妹だからと安心して秘密を漏らしたぼくがバカだった。そのときにはぼくも願った、口にはしなかったが。

サキは短編の名手といわれている。単に短いだけでなく、文字になっていない「間」というのか、語られる世界と語られない世界の間を読む楽しさがあると思う。また、「口うるさい女性」に対して、それに苦慮する男性が僅かばかりの抵抗や復讐を試みる話が好きな人には大いに楽しめる短篇だと思う。

「スレドニ・ヴァシュタール」の翻訳は、創元推理文庫『怪奇小説傑作集2』所収の宇野利泰訳、白水Uブックス『クローヴィス物語』(挿絵:エドワード・ゴーリー)所収の和爾桃子などがある。

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