カズオ・イシグロ

日々

十月の信頼できない海馬

 マーティンは、秋がまたやってきたのを知った。犬が、秋の風と霜と、木の下で醸酵したリンゴの匂いをもって走りこんできたからだ。犬は、時計のゼンマイのようなその黒い毛のなかに、キリン草、夏の名残りのほこり、ドングリの殻、リスの毛、飛び...
2020.03.04
フィンランド

古い記憶がよみがえる、A Village After Dark / Kazuo Ishiguro

Helsinki 2005 生まれつき三半規管のできが悪いのか、子供の頃からなんとなく方向音痴なところがある。フィンランドでも、やはりよく道に迷ったのは緯度が名古屋より高く、地磁気の感覚が微妙にズレていたから、なんてことが原因だった...
2020.01.14
日々

夢見を誘うラヴ・ストーリー、カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』Kazuo Ishiguro: The Buried Giant

Öland, Sweden 2003 『わたしを離さないで』から十年ぶりの新作となる、カズオ・イシグロの小説『忘れられた巨人』を読んだ。アーサー王伝説時代のブリテン島を舞台に、老夫婦がおぼろげな記憶をたよりに息子を訪ねて旅をする...
2019.02.28
短篇小説

黄昏時のホラー、カズオ・イシグロ「夕餉」 Kazuo Ishiguro / A Family Supper (1982)

ストックホルム、スウェーデン 2003年 カズオ・イシグロの短編小説『夕餉』は「黄昏時のホラー」だ。口の重い語り手、鎌倉の古い日本家屋。小津安二郎監督がラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の小説を映画にしたら、こんなふうになるのではない...
2020.01.10